『TOKYOタクシー』──木村拓哉 × 倍賞千恵子 × 山田洋次監督が描く、“人生最後の東京ドライブ”

2025年11月21日公開の映画『TOKYOタクシー』は、タクシーに乗り合わせた“まったくの他人同士”が、東京という巨大都市を舞台に人生を語り合うヒューマンドラマだ。監督は名匠・山田洋次。主演には木村拓哉と倍賞千恵子という、日本映画界を象徴する二人が顔をそろえた。

タクシー1台がつないだ“人生の旅”。その出会いは偶然か、それとも運命か——。

あらすじ：85歳の女性が、最後に見たい「東京」があった

タクシー運転手・宇佐美浩二（木村拓哉）は、柴又で一人の老婦人・**高野すみれ（倍賞千恵子）**を乗せる。
行き先は「神奈川県・葉山の高齢者施設」。

ただし、すみれにはひとつだけ願いがあった。

「この東京を、最後にもう一度だけ見ておきたいのです」

そこから二人の“寄り道ドライブ”が始まる。
浅草、銀座、東京タワー、そして自分の思い出の地。

歩んできた人生を語るすみれと、無口だがどこか影を持つ運転手の宇佐美。
旅の終わりが近づくにつれ、二人の心はゆっくりと重なり合っていく。

本作は、いわゆる派手な演出はない。
タクシー内での会話、東京の街並み、人生の振り返り——。

だからこそ 木村拓哉の“静かな表情の芝居” が刺さる。
普段の強さ・快活さとは違う、人生に疲れた男の影がリアルだ。

85歳の女性を演じる倍賞千恵子は圧巻。
一つひとつの言葉が温かく、ユーモアがあり、ときに深い。

「人生って、長いようで、短いのねぇ」
「許せないことも、忘れてしまうことも大事なのよ」

観客自身の人生をも照らすような、優しい名言が随所にある。

本作の原作は、フランス映画 『パリタクシー（Driving Madeleine）』。
山田洋次監督はこの作品に着想を得て、日本・東京の情緒を重ね合わせることで“日本版”として再構築した。

また、映画は 第38回東京国際映画祭でセンターピース作品 に選出。
世界的映画祭で大きな注目を集めた。

豪華すぎるキャスティングで、物語に厚みが増している。

85歳の主人公が語る人生は、日本の高齢化時代そのもの。
「老い」と「希望」をどう見つけるか、静かに問いかける。

誰にでも

すみれが巡る東京の景観は、観客自身の記憶とも重なり、切なく、温かい。

タクシーは、赤の他人同士が出会う小さな空間。
そこで巻き起こる人生の交流は、現代社会の“人との距離感”にも気づかせてくれる。