明暗が分かれるスーツ大手 青山商事vsAOKIの戦略

ニュース

かつてサラリーマンの必需品だったスーツ。しかし今、その需要構造が大きく変化している。市場を長年けん引してきた「洋服の青山」(青山商事)と「AOKI」(AOKIホールディングス)の2社は、同じ逆風の中にいながら、近年“明暗”が分かれつつある。

本記事では、スーツ市場の変革、そして大手2社の戦略の違いを整理し、「これからのスーツ業界」がどこへ向かうのかを読み解く。

スーツ需要はなぜ縮小したのか

● リモートワークの普及

コロナ禍を機にリモートワークが急増し、毎日スーツを着る働き方は急減。出社頻度そのものが低下し、「きれいめカジュアル」で勤務するスタイルが広がった。

● ビジネスウェアのカジュアル化

クールビズを経て、企業文化として「スーツ必須」がほぼ消滅。オフィスカジュアル・ジャケパン・セットアップなど、スーツ“一択”ではない時代となった。

● 中高年中心のスーツ需要が縮小

大量にスーツを購入してきた中高年層が定年退職を迎え、若い世代はそもそもスーツを所有する枚数が少ない傾向にある。

このように、スーツ市場は長期的に“構造的縮小”へ向かっている。

しかしスーツ市場は「消滅」していない

縮小が続く一方で、ここ数年は以下の理由で需要が回復基調にある。

  • 冠婚葬祭用の礼服需要の復調
  • 入学式・入社式など、フォーマル用途の底堅さ
  • 「量より質」を求める消費者の増加
  • パターンオーダーや高機能スーツの人気上昇

つまり、“毎日の制服としてのスーツ”は縮小したものの、“必要な場面で選ぶスーツ”の価値はむしろ高まっている。

明暗が分かれた青山商事とAOKI

同じ市場環境にもかかわらず、2社には近年の業績や話題性で差が生まれている。鍵になったのは戦略の転換速度と事業構造の違いだ。

AOKI:事業多角化で早期からリスクヘッジ

AOKIは比較的早い段階から“脱スーツ依存”を進めてきた。

  • カラオケ事業(コート・ダジュール)
  • ブライダル・写真スタジオ(アニヴェルセル、スタジオアリス連携)
  • ネットカフェ・快活CLUB など

「衣料品以外の収益源」を確立することで、スーツ販売の不振を補う構造を構築。
さらに近年は、女性向け衣料・ビジカジ・カジュアルウェアを大きく拡大し、2030年代には売上構成比を大きく引き上げる方針を示している。

店舗でも、カジュアル売り場の比重を増やし、若年層の来店を促進。これらの戦略が功を奏し、安定した収益基盤を維持している。

青山商事:スーツ依存モデルからの転換に苦戦

一方、青山商事は長年、スーツとビジネスウェアが事業の中心であったため、需要縮小の影響を強く受けた。

近年は以下のように多角化・改革を加速しているものの、回復には時間がかかっている。

  • オーダースーツブランドの強化
  • 若年層向けの新シリーズ投入
  • カジュアル衣料の拡大
  • 店舗のスクラップ&ビルド

これは、長年築いた“スーツ中心の巨大な店舗網”が重荷になっている側面も強い。固定費がかさみ、オフィスカジュアル化の流れに対応するスピードが、AOKIほど早くなかったといえる。

業界全体に見える「スーツの再定義」

スーツ業界は、“量を売るビジネス”から“選ばれる1着を提供するビジネス”へと転換している。

今後のキーワードは以下のとおり。

● パーソナライズ(オーダースーツ)

自分に合った一着を求める層が増えており、若年層でも利用しやすい価格帯が浸透。

● 高機能素材

ストレッチ・防しわ・速乾など、日常で使いやすいスーツが増加。

● 礼服・フォーマルの安定需要

「絶対に必要な場面」のニーズは減らないため、ここが底堅い。

● カジュアルとの境目が曖昧に

セットアップやビジカジは今後も主流になり、スーツ量販店も売り場の変革を求められる。

まとめ ― 青山商事とAOKIの分岐点

  • 市場全体は縮小 → 回復基調だが、構造は大きく変化
  • AOKI:早期の多角化・カジュアル強化で安定
  • 青山商事:スーツ依存からの転換に時間を要する
  • 今後は「量販店」ではなく「選ばれる衣料店」への転換が鍵

スーツ市場は“終わる”のではなく、働き方の変化に合わせて姿を変えていく。その変化をどう捉え、どう進化するか大手2社の戦略の違いが、その象徴となっている。

参考文献

  • 帝国データバンク「上場紳士服7社 動向調査(2024年度)」 — 売上高・営業利益・店舗数などの業界全体データ。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES+2TDB+2
  • J-CAST ニュース「「スーツ離れ」なのになぜ?紳士服業界の2大巨頭が堅調な業績」2025年11月号。J-CAST ニュース
  • ITmedia ビジネスオンライン「スーツ需要が回復中 — 上場企業の売り上げは拡大も、店舗数は減少」2024年03月18日。ITmedia+1
  • ITmedia の最近記事「スーツ大手AOKIが見据える2035年“選ばれる服”を増やすための改革」2025年11月22日。ITmedia+1
  • WWD JAPAN / WWDJAPAN「スーツ量販店『日常着』は商機となるか」 2024年。WWDJAPAN+1
  • 青山商事公式IR資料および中期経営計画。aoyama-syouji.co.jp+1

コメント

タイトルとURLをコピーしました